第5章 人骨
第3節 まとめ
観察の結果、本丘陵に納められた人骨は少なくとも成人 27、未成人 6、年齢不明 8 の合計 41 人分 であると考えられる。しかし、前章までに述べてきた通り、近世の墓域としての本丘陵の状態は、後 代の改変により大きく攪乱されていることから、この数字をもって本丘陵の墓域としての規模を反映 しているものとは考えにくい。また、人骨そのものについても残存状況は完形を保ったものが少なく、
骨長計測を含めた形態的な特徴を検討することは困難であった。
一方で、72 号墓の蔵骨器1から最小個体数で 11 体分の人骨が出土したことについては特徴的な事 例と捉えられる。遺構としての 72 号墓は大きく削平されていることから、蔵骨器もどの程度原状を 保っているものかは慎重な検討を要するが、改葬ないし合葬を示す状況であるだけに、注視すべき 内容であると考えられる。
これまでの『前田・経塚近世墓群』の発掘調査報告書でも述べられているが、人骨の分析につい ては更なる専門的な視点からの分析による新たな知見が期待されるものであるとともに、銘書や蔵骨 器といった他の要素との複合的な視点による考察が今後の課題であると思われる。
〈引用・参考文献〉
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16 号国際センター線に伴う埋蔵文化財発掘調査報告書―』浦添市文化財調査研究報告書
浦添市教育委員会 2012『前田・経塚近世墓群3 前田真知堂 B 丘陵 (1)・前田真知堂 C 丘陵 (1)―都 市計画街路国際センター線及び沢岻石嶺線工事に伴う埋蔵文化財発掘調査報告書―』
浦添市教育委員会 2013『前田・経塚近世墓群4 経塚子の方原 A 丘陵(1)―浦添南第一土地区画整 理事業に伴う緊急発掘調査報告書―』
浦添市教育委員会 2014『前田・経塚近世墓群5 経塚南小島原 A 丘陵 ―浦添南第一土地区画整理事 業に伴う緊急発掘調査報告書―』
江藤盛治編 1991『人体計測法 2』人類学講座別巻 1 雄山閣
谷畑美帆・鈴木隆雄 2004『考古学のための古人骨調査マニュアル』学生社
土肥直美・北條真子 1998「那覇市銘苅古墓群(B・E)地区出土の人骨」『銘苅古墓群(Ⅰ)―那覇新 都心土地区画整理事業に伴う緊急発掘調査報告Ⅴ―』那覇市教育委員会 那覇市文化財調査報 告書第 39 集
土肥直美・譜久嶺忠彦 1999「那覇市銘苅古墓群南(A・C・D)地区出土の人骨」『銘苅古墓群(Ⅱ)
財調査報告書第 40 集
譜久嶺忠彦・土肥直美・石田肇 2000「那覇市ナーチュー毛古墓群出土の人骨」『―那覇新都心土地区 画整理事業に伴う緊急発掘調査報告Ⅶ―』那覇市教育委員会 那覇市文化財調査報告書第 44 集 譜久嶺忠彦・土肥直美・石田肇・瑞慶覧朝盛・泉水奏・佐宗亜衣子・比嘉貴子 2001「ヤッチのガマ・
カンジン原古墓群出土の人骨」『ヤッチのガマ カンジン原古墓群原古墓群―県営かんがい排水 事業(カンジン地区)に係る埋蔵文化財発掘調査報告書―』沖縄県立埋蔵文化財センター 山本美代子 1988「日本古人骨永久歯のエナメル質減形成」『人類学雑誌』96 日本人類学会 I.W.Cornwall 1964 Bones for the Archaeologist. Phoenix House LTD
D.R.Brothwell 1981 Digging up Bones. Cornell University Pres
E.SCHMID 1972 Atlas of Animal Bones For Prehistorians, Archaeologists and Quaternary Geologists. Elsevir Publishing Company
第45表 出土人骨一覧表 遺
構 No.
蔵骨器 No.
人 骨 No.
年齢 性 別
出土部位 備考
16 一括 1 不明 不明 肋骨破片、寛骨破片、大腿骨L/R
27 一次葬 1 乳幼児 不明
前頭骨、頭頂骨L・R、後頭骨、側頭骨L・R、下顎骨、椎骨(14)、肋骨L(6)・
R(6)、肩甲骨R、鎖骨L・R、上腕骨L・R、尺骨L・R、基節骨、腸骨L・R、坐骨L・R、
大腿骨L・R、脛骨L・R、腓骨L・R 33 ― 1 成人 不明 大腿骨L・R、脛骨R
33 ― 2 成人 不明 大腿骨L、脛骨R・R
33 ― 3 幼児 不明 椎骨破片、肋骨L・R・破片、鎖骨L・R、尺骨R、恥骨R、大腿骨L・R、脛骨L、遊離歯
遊離歯がi~M₁/¹まで残存 のため小児段階と推測
37 一括 ― ― ― 椎骨椎体(2) 集計対象外、未成人
38 一括 ― ― ― 脛骨R 集計対象外
45 1 1 成人 不明 頭頂骨L・R、下顎骨L・R、大腿骨L
46 一括 ― ― ― 破片のみ 集計対象外
48 一括 ― ― ― 第3中手骨L・R 集計対象外
49 1 1 乳児 不明
頭頂骨L・R、側頭骨L・R、軸椎、肋骨L(8)・(9)、肩甲骨L・R、鎖骨R、上腕骨L・
R、橈骨L・R、尺骨L・R、腸骨L・R、坐骨L・R、大腿骨L、脛骨L・R、腓骨L/R(2)
51 一括 ― ― ―
側頭骨L(2)・R(2)、上顎骨L・R、下顎骨L(2)・R・L+R(3)、軸椎、胸椎、椎骨
(6)、肋骨L(2)・破片、肩甲骨L(4)・R(4)、鎖骨L(4)・R(5)、上腕骨L
(6)・R(8)、橈骨L(3)・R(3)、尺骨L(4)・R(6)、大菱形骨R、小菱形骨L
(2)・R(2)、有頭骨L・R、舟状骨L(2)・R(2)、月状骨R、第1中手骨R、第2中 手骨R、第1基節骨L・R(2)、基節骨(12)中節骨(6)、末節骨(5)、腸骨L、寛 骨臼+腸骨R、大腿骨L(7)・R(5)・L/R(11)、膝蓋骨R(4)、脛骨L(5)・R
(4)、腓骨L(6)・R(3)・L/R、踵骨L(2)・R、距骨L(3)・R(3)、外側楔状 骨R、中間楔状骨R(2)、内側楔状骨R(2)、立方骨L、舟状骨L・R(2)、第1中足骨L
(2)・R(2)、第2中足骨R(2)、第3中足骨L・R、第4中足骨L・R(2)、第5中足骨L
(2)・R、基節骨(3)、末節骨(3)、中手/中足骨L/R(14)、指骨
集計対象外
52 一括 ― ― ―
腰椎(3)、椎骨(3)、肋骨L(2)・R・破片、肩甲骨L、鎖骨R、上腕骨L・R、橈骨 L・R、尺骨L・R、第1中手骨R、第2中手骨L、第3中手骨L、第4中手骨L、基節骨
(3)、寛骨L・R、大腿骨L・R、脛骨L・R、腓骨R、L/R(2)、距骨R、第1中足骨L
集計対象外
53 一括 ― ― ―
頸椎、胸椎、椎骨破片、肋骨破片、第2中手骨L、基節骨(3)、中節骨(4)、遊離 歯
集計対象外
57 2 1 不明 不明
後頭骨、側頭骨L、上顎骨R、胸椎、腰椎(2)、鎖骨L、尺骨L、大菱形骨R、有鈎骨 L・R、舟状骨R、月状骨L・R、三角骨R、第2中手骨L、第3中手骨L・R、、基節骨
(4)、中節骨(2)、坐骨L、大腿骨R、脛骨L、腓骨L、踵骨R、中間楔状骨L、内側 楔状骨L/R、立方骨R、第5中足骨R、基節骨、末節骨、中手/中足骨(4)、遊離歯
咬耗状態から比較的若い 年齢段階か?
57 3 1 不明 不明 分析不可
57 4 1 成年~
熟年 不明
前頭骨、頭頂骨L・R、環椎、頸椎(3)、胸椎(7)、腰椎(5)、椎骨、胸骨体、肋 骨破片、上腕骨R、橈骨L・R、大菱形骨L・R、、小菱形骨L、有鈎骨L、舟状骨L、月 状骨L、三角骨R、豆状骨L、第1中手骨L、第2中手骨L・R、、第3中手骨L・R、第4中 手骨L、第5中手骨L、基節骨(3)、中節骨、末節骨(2)、寛骨臼L・R、大腿骨R、
脛骨L・R、踵骨L・R、距骨L・R、外側脛状骨L・R、中間楔状骨L・R、内側楔状骨L・
R、立方骨L・R、舟状骨L・R、第1中足骨L・R、第2中足骨L・R、第3中足骨L・R、第₄ 中足骨L・R、第5中足骨R、第1基節骨L・R、基節骨(3)、末節骨、中手/中足骨
(6)、手根/足根骨、遊離歯
57 5 1 熟年 M
下顎骨、軸椎、頸椎(5)、腰椎(4)、仙骨、胸骨、肩甲骨L・R、鎖骨L・R、上腕 骨L・R、尺骨L・R、大菱形骨R、小菱形骨L・R、有頭骨L・R、有鈎骨L、舟状骨L・
R、月状骨L・R、第1中手骨L、第2中手骨L・R、第3中手骨L・R、第4中手骨L・R、第5 中手骨L・R、寛骨L・R、大腿骨L・R、膝蓋骨L・R、脛骨L・R、腓骨L・R、踵骨L・
R、距骨L・R、外側楔状骨L・R、中間楔状骨L・R、内側楔状骨L・R、立方骨L・R、舟 状骨L・R、第1中足骨L・R、第2中足骨L・R、第3中足骨L・R、第4中足骨L・R、第5中 足骨L・R
第45表 出土人骨一覧表 遺
構 No.
蔵骨器 No.
人 骨 No.
年齢 性 別
出土部位 備考
57 5 2 老年 F
下顎骨、軸椎、頸椎(4)、腰椎(5)、仙骨破片、胸骨丙、肩甲骨L・R、鎖骨L・
R、上腕骨L・R、橈骨L・R、尺骨L・R、大菱形骨R、小菱形骨L・R、有頭骨L・R、有 鈎骨L・R、舟状骨L・R、月状骨L・R、第1中手骨L・R、第2中手骨L・R、第3中手骨 L・R、第4中手骨L、第5中手骨L、寛骨L・R、大腿骨L・R、膝蓋骨L・R、脛骨L・R、
腓骨L・R、踵骨L・R、距骨L・R、外側楔状骨L、中間楔状骨L、立方骨R、舟状骨L・
R、第1中足骨L・R、第2中足骨R、第3中足骨R、中足骨L/R
57 5 一括 ― ―
上顎骨L、頭蓋骨破片、胸椎(22)、肋骨L(15)・R(16)・破片、第1基節骨L(2)・
R(2)、基節骨(12)、中節骨(9)、末節骨(5)、第1基節骨L・R・L/R、基節骨
(10)、中節骨(4)、末節骨(3)
集計対象外
57 一括 一括 ― ― 頭蓋骨破片、肋骨破片、上腕骨L・R、腸骨R、大腿骨L、脛骨L・R、遊離歯
集計対象外 墓室床面一括
59 1 1 熟年~
老年 M
前頭骨、頭頂骨L・R、側頭骨L・R、後頭骨、下顎骨、肩甲骨L・R、鎖骨L・R、上腕 骨L・R、橈骨L・R、尺骨L・R、第2中手骨R、第3中手骨R、基節骨(2)、中節骨、大 腿骨L・R、脛骨L・R、腓骨L/R(2)、第1中足骨L、第4中足骨R、中手/中足骨L/R
(9)
64 1 1 不明 不明
椎骨(2)、上腕骨R、有鈎骨L、第1中手骨L、第4中手骨L・R、基節骨(2)、大腿骨L・
R、脛骨R、外側形状骨L、内側楔状骨R、舟状骨R、第2中足骨R、第4中足骨R、第5中 足骨R、第1基節骨L、基節骨、中節骨、末節骨
65 1 1 不明 不明 分析不可 65 2 1 不明 不明 分析不可 65 3 1 不明 不明 分析不可 65 4 1 成人 不明 遊離歯
65 4 2 小児 不明 遊離歯 M²/₂未萌出ないし萌出中
65 4 3 乳幼児 不明 遊離歯 乳歯のみ
66 1 1 成人 不明
上顎骨、環椎、肋骨破片、尺骨L、大菱形骨L・R、小菱形骨R、有頭骨R、有鈎骨R、
舟状骨L・R、月状骨L・R、三角骨R、第3中手骨L・R、基節骨(3)、中節骨(2)、末節 骨、距骨L、外側形状骨L・R、中間楔状骨L、舟状骨R、第1中足骨R、第2中足骨R、第 4中足骨R、第5中足骨L、第1基節骨R、基節骨(2)、中節骨、末節骨(2)、中手/中足骨 (5)、遊離歯
66 2 1 成人 不明 後頭骨、下顎骨、尺骨R、基節骨、大腿骨L・R
66 3 1 成人 不明 上腕骨R、有鈎骨R、基節骨、膝蓋骨L・R、舟状骨L、中手/中足骨(3)、遊離歯
66 4 1 成人 不明
鎖骨L、上腕骨L・R、橈骨L・R、尺骨L・R、大腿骨L・R、脛骨L・R、腓骨L・R、遊離 歯
66 5 1 成人 不明 肋骨破片、橈骨L・R、尺骨L・R、大腿骨L・R、遊離歯
67 1 1 不明 不明 破片のみ
67 2 1 成人 不明
頭蓋骨破片、頸椎、胸椎、肋骨破片、上腕骨L・R、橈骨L・R、尺骨L・R、有頭骨L、
有鈎骨L、月状骨L、豆状骨R、基節骨(4)、中節骨(3)、末節骨(3)、大腿骨L・
R、脛骨L・R、腓骨L、立方骨L、第3中足骨L・R、第4中足骨L、中手/中足骨L/R
(4)、指骨、遊離歯
67 3 1 不明 不明 破片のみ
67 4 1 不明 不明 破片のみ
72 1 一括 成人 不明
頭頂骨L・R+後頭骨、上顎骨L(1)・R(4)、側頭骨L(5)・R(4)、下顎骨L・R・L+R
(3)、鎖骨L(2)・R、肩甲骨L(2)・R(3)、上腕骨L(10)・R(11)、橈骨L・
R(2)、尺骨L(4)・R(4)、第3中手骨R(2)、中節骨、寛骨L、大腿骨L(13)・R
(13)、膝蓋骨R、脛骨L(4)・R(6)、腓骨L/R(8)、第1中足骨L、指骨(2)
残存状態から検討すると 大腿骨右から最小個体数 は11と推定される 72 1 一括 未成人 不明 上腕骨L、大腿骨L・R、脛骨L、腓骨L/R
第45表 出土人骨一覧表
遺 構 No.
蔵骨器 No.
人 骨 No.
年齢 性 別
出土部位 備考
72 2 1 成人 不明
後頭骨、頭蓋骨破片、下顎骨、鎖骨L、上腕骨L、橈骨L/R、尺骨L、中手/中足骨 L/R、寛骨L・R、大腿骨L・R、脛骨L・R、遊離歯
72 2 2 未成人 不明 遊離歯
未咬耗であることから№1 と別個体と判断
72 ― 一括 ― ―
頭蓋骨破片、下顎骨、肋骨破片、肩甲骨L(2)・R、鎖骨L・R、上腕骨L(5)・R
(4)、橈骨R(5)、尺骨L・R(5)、基節骨、大腿骨L(2)・R、脛骨宇L・R
(2)、腓骨L(2)・R(4)、踵骨L・R、中手/中足骨
蔵骨器外出土 集計対象外
第46表 最少個体数 集計表
M F 性別
不明
M F 性別
不明
M F 性別
不明
16 0 0 1 1
27 0 1 1 1
33 2 2 1 1 3
45 1 1 0 1
49 0 1 1 1
56 0 0 0
57 1 1 1 1 4 0 1 5
59 1 1 0 1
64 1 1 0 1
65 1 1 1 1 2 3 6
66 5 5 0 5
67 1 1 0 3 4
72 11 11 1 1 12
41 墓
№
成年 熟年~老年 成人
小計
総計 合計 年齢
段階 不明 乳幼
児 小児 若年 年齢不明
年齢 性別 不明 未成人
小計
第47表 骨に見られる変異等の観察表
墓 No.
蔵骨器 No.
人骨
No. 部位 L: 変異種別 観察所見
27 一次葬 1 i¹ L: 齲蝕 舌側面の歯冠に齲蝕
49 1 1 頭蓋骨 ― 未形成 前頭縫合及び大泉門未癒合
52 一括 ― 腰椎 ― 骨棘形成 椎体復縁に骨棘形成
57 5 一括 後頭骨・環椎 ― 癒合 後頭骨大孔周辺と環椎が癒合して一体化 57 5 一括 胸椎 ― 骨棘形成 胸椎の一部の椎体復縁に初期の骨棘形成
64 1 1 上腕骨 : 変形 骨幹中央にねじれ状の変形
66 1 1 C(下顎) L エナメル質減形成 線状の形成不全